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大会長講演

「成長発育期における外傷歯への臨床的対応」

橋本 敏昭
福岡歯科大学成育小児歯科学分野 臨床教授

成長発育期は乳歯、永久歯を問わず根未完成歯への外傷も多く、歯根の成長を考慮した対応が必要となる。歯冠破折歯では破折片があれば接着を試み、なければCR冠などで修復を行う。露髄がある場合は、その大きさ、受傷からの経過時間、感染の程度、協力状態等を考慮し直接覆髄、部分的断髄法や生切、抜髄や感染根管治療など状況に応じた処置を行う。根未完成歯で冠部歯髄のみ感染が疑われる場合は、Apexogenesisを試みる。中心結節破折などで根尖性歯周炎を起こしている場合はPulprevascularization やApexificationを試みる。いずれにしても歯根の発育に関与するヘルトヴィッヒ上皮鞘をできるだけ保護することが重要である。歯根の成長発育を阻害するためFCは禁忌である。根未完成歯の陥入例では自然萌出が期待できるためそのまま経過観察を行うことが多い。歯根破折歯では予後に4パターンあり、歯内療法の必要なものとそのまま経過を見るもの、抜歯が必要となるものとがある。また受傷後特に乳歯では様々な変色がよく起こる。ダークグレイに変色したものは歯髄壊死の可能性が疑われ、黄色への変色は歯髄腔が狭小化したり閉塞したりしているものが多く、歯内療法を行わなくても自然に後継永久歯と交換するものが多い。しかし受傷歯のうち内部吸収、外部吸収を起こすものはできるだけ早く水酸化Ca療法を行い吸収の進行を阻止しなければならない。脱落歯において歯根膜は時間とともに急激に壊死するため緊急に対応しなければならない。30分以内がよいとされる。損傷が大きいほどアンキローシス等を起こしやすくなる。乳歯もできるだけ保存に努めるが、咬合や後継永久歯に影響がある場合は抜歯を行い、保隙処置が必要となることもある。成長発育期では暫間的な配慮も入れて予後良好となるように治療方針を決定し、処置後は継続的観察を行い、各年齢に応じた適切な対応を行う必要がある。



基調講演

「琉球大学におけるラオス・エチオピア海外医療援助」

新崎 章
愛知学院大学口腔先天異常学研究室 
前琉球大学大学院医学研究科顎顔面口腔機能再建学講座 教授

琉球大学はこれまで27年間にわたりラオス人民民主共和国(以下、ラオス)と
医療、学術、さらに教育に関する交流を行ってきました。特に、医学部では1992年
から6年間にわたる“公衆衛生支援プロジェクト”、そして1999年から2004年秋
までの“セタティラート病院改善プロジェクト”などのラオス国における医療援助活動
を行い、これまで81名の教職員を派遣し医療協力を行う一方、同国からも13名の研
修員を受け入れ、医療・医学の分野の協力・連携による国際協力および交流による国
際貢献をしてきました。さらに2002年からは「日本口唇口蓋裂協会」の夏目長門常
務理事の協力の下、琉球大学医学部歯科口腔外科講座砂川 元教授(当時)が中心と
なって医学部附属病院(麻酔科、看護部を含めて)を主体に、ラオスの口唇口蓋裂患者
に対する無償手術をスタートしました。その活動を継続・発展させるために砂川 元
教授は沖縄県歯科医師会員と連携して「沖縄・ラオス国口唇口蓋裂患者支援センター
(以下、支援センター)」を設立し、昨年12月までの18年間に総計347例の無償手術
を行ってきました。この海外医療援助活動が高い評価を受け、同支援センターは
2005年に『保健文化賞』、2006年に『沖縄平和賞』、2007年に「沖縄タイムス国
際平和賞」を受賞しました。私が教授に昇任した2013年からはラオスと同様に「日
本口唇口蓋裂協会」と愛知学院大学の協力の下、エチオピア連邦民主共和国(以下、
エチオピア)でも同国の口唇口蓋裂患者のためのチャリティーオペレーションを実施
してこれまで85例の無償手術を行っています。今回は琉球大学大学院医学研究科顎顔
面口腔機能再建学講座(以下、顎顔面口腔機能再建学講座)がこれまで行ってきたこ
れらの海外医療援助活動について講演します。講演内容としては最初に@琉球大学医
学部附属病院歯科口腔外科での口唇口蓋裂患者に対するチームアプローチによる一貫
治療を紹介し、続いて海外医療援助による国際貢献としてA琉球大学とラオスとの交
流の歴史、B顎顔面口腔機能再建学講座とラオスとの交流の絆と実績ならびに海外医
療援助活動(ラオスとエチオピアでのチャリティーオペレーション)について動画を
含めて発表する予定であります。


リレー講演1.

「小児疾患に対する他科との連携」

比嘉 努
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター歯科口腔外科 部長

当院は、全国でも数少ないこども病院を併設し胎児期から成人まであらゆる疾患
に対応する事が可能な高度多機能病院である。その中で、当科は口腔外科主体の
治療から、病院の概念と同様小児から大人まで幅広い歯科医療の展開が求められ
ている。今回われわれは、当科の小児疾患の現状を把握するとともに今後の臨床
に寄与することを目的に検討を行った。対象は、2014年1月から2018年12月ま
での5年間に当科を受診した初診患者8,425名のうち16歳未満の小児患者1,813
名とした。方法は、電子カルテを参考に検討を行った。小児患者は、初診患者全
体の22.0%であった。疾患別内訳は歯科疾患が最も多く、ついで先天異常・発育
異常、外傷などであった。その他として、当院には小児血液・腫瘍科があり小児
悪性疾患(血液腫瘍)の周術期口腔機能管理症例も多く認められた。小児の診療
内容によっては対応困難な場合があるが、当院の多岐にわたる専門性を活かし小
児外来看護師、救急医、小児科医との連携を充実させている。例として、小児の
手術や治療に先立ち患者である子供に対し画像や人形を使って分かりやすく説明
し、小児がん患者の周術期口腔管理については患児・家族を中心にした連携医療
を充実させ、患児が安心して医療を受けられるように導くといった工夫を行って
いる。本講演では、一般的に難しいとされている小児外傷、障がい児歯科医療の
取り組みについても報告を予定している。


リレー講演2.

「北九州市立総合療育センター歯科におけるさまざまな障害を有した成長発達期の
患児者への対応について」

吉田 篤哉
北九州市立総合療育センター歯科 主幹

北九州市立総合療育センターは北九州市福祉事業団によって運営される施設のひ
とつで、医療型障がい児者入所施設と位置付けられます。その中の診療科の一つ
に歯科があります。歯科においては新生児から成人までの幅広い年齢で特別な配
慮(スペシャルニーズ)を必要とする方々を対象に歯科診察を行っています。 歯
科受診対象となる患児者は生直後から老人に至るまでとなります。例えば出生前
診断にて口唇口蓋裂とされたケースに関しては、出生前より両親への口唇口蓋裂
に対する理解、そして治療の流れなどの説明でご家族と関わっていくケースもあ
ります。種々の障がいを持った患児の傾向として、理解、協力が得られないがた
めの口腔内清掃状態不良による多数歯う蝕が見られるケースが多く見られること
が挙げられます。また、う蝕がないケースでも、歯垢、歯石が付着し、歯肉の慢
性炎症があることが多く、放置しておくと永久歯列への悪影響、更には早期に歯
牙を喪失する原因となりかねません。そのような患児に対して、通常の外来診療
に併せて行動変容法、行動調整法、鎮静法、全身麻酔を準備し、患児に最適な治
療を行えるよう環境を整えています。今回、我々は療育センターにおける診療の
流れをいくつかのパターンに分けて紹介したいと思います。



教育講演

「歯科用コーンビーム(CB)CTの基礎と臨床」

森本 泰宏
九州歯科大学歯科放射線学分野 教授

「レントゲンなくして医療なし」という言葉があるようには現在の医学・歯学に
は画像診断や放射線治療は無くてはならない存在です。それは放射線を用いた画
像により人体の内部構造を非侵襲的に描出できるからです。正常構造物の形態や
内部構造だけではなく、病変の有無、その広がり及び正常を我々に示してくれま
す。歯科医療は歯や歯槽骨といった硬組織が主な対象であるため、その内部構造
や病変を描出するためエックス線画像は発見された翌年から臨床応用されました
。そして現在ではCT、MRI、超音波及びPET-CTを歯科医療にも応用することが
必要な時代になっています。その中でも歯科用コーンビーム(CB)CTは歯科医
療に大きなイノベーションを起こした画像診断装置です。歯や歯周組織といった
小さな構造物を口内法と遜色ないレベル迄断層像として描出できます。今後、歯
科医療においてその普及は言うまでもないものと思います。そこで、今回の教育
講演では「歯科用コーンビーム(CB)CTの基礎と臨床」と題してお話しさせて
頂こうと思います。まずは歯科用CBCTを読像する上で知っておいてもらいたい
用語を解説させて頂いた後、代表的な正常構造物を確認させて頂きます。その後
、歯科関連疾患の代表例を供覧させて頂き、読影のポイントをご説明させて頂き
ます。今回の講演を拝聴して頂き、歯科用CBCTの基礎とその臨床応用及び読像
ポイントを少しでも把握され、日常臨床にお役立て頂ければ幸いに思います。


リレー講演3.

「外傷歯における保健室での対応」

吉田 忠司
吉田歯科医院 院長

外傷歯において、乳歯では、動揺、挺出、陥入、脱臼などが多く見られ、永久歯
では歯冠破折、脱臼が多く見られる。年齢は、1〜2歳及び、7〜8歳がピークであ
る。また歯に加わる機械的衝撃については、受け止める側は、骨と歯根膜である
。エネルギーは、質量と速度により決定され、衝撃が一部に限局すると破折、外
力が分散すると、脱臼や歯槽骨骨折を伴う。外傷歯の治療においては、初期の対
応が予後を大きく左右する。そこで、保健室においてはガイドライン(日本外傷
歯学会外傷歯治療のガイドラインを参照)に基づき、科学的に行わなければなら
ない。ただ、今回提示する症例に示すように、日常の臨床においてはガイドライ
ンや、マニュアルには存在しない結果を経験することもたびたびあり、それらを
考慮した上で、臨床的な判断をしなければならないのも事実である。外傷歯治療
において、安易な抜歯、抜髄をさけ、患者のQOLを上げるよう、口腔外科医、小
児歯科医が協力していかなければならないと考える。外傷歯の初期診断において
特に重要なのは、@外傷歯の的確な診断と処置を行う事の、必要性を理解する事
。A通常6ヶ月間、重篤な症例では数年にわたる経過観察と処置が必要な事を理
解する事と考える。処置を行うのは、歯科医師でありますが、初期対応は学校で
あり、保健の先生であります。その為には、小児歯科学会専門医、外傷歯学会認
定医等の専門医資格をもった歯科医師との連携は重要です。大丈夫だと思って、
放置して重篤な状態になった事例が非常に多くみられます。我々は症例を通して
、初期対応の必要性、重要性を学校関係者に啓蒙するとともに臨床においての対
応をご理解頂くように努力する必要があると考える。 より専門的な知識を習得し
たい歯科医師の方は、「日本外傷歯学会」の認定医を取得することを、また、専
門的に処置を受けたい患者様は、「日本外傷歯学会認定医」の診察を受ける事を
お勧めします。


リレー講演4.

「根未完成永久歯の再植と移植症例の長期的予後」

辻 裕文
つじ歯科医院 院長

若年期に外傷により歯が脱落したり、重度の齲蝕により喪失することがある。そ
の際、治療として歯の再植や歯の移植が行われる。他の補綴処置と異なり臨在歯
を切削する必要はなく非常に有効な治療法である。そこで、完全脱臼歯を再植し
た症例、および歯の移植症例について長期にわたり観察し、臨床的ならびにエッ
クス線学的に検討した。 症例)8歳児の根未完成永久歯完全脱臼後の再植症例
では、歯髄は壊死したが、歯根膜は再生し14年経過後も正常に機能している。
次に、何らかの原因により歯の欠損部に根未完成歯の移植を施した7症例について
報告する。7名の患者における手術時の年齢は、14歳から19歳であった。7症例
中全例とも歯根膜は正常に再生した。歯髄は、7例中5例が生活歯の状態で、歯髄
腔は経過とともにエックス線不透過性を呈した。歯髄腔内の石灰化が進行してい
る状態であると考えられた。一方、2例は失活した。失活した2例中1例には根管
治療を施し、10年以上臨床的、エックス線学的に評価し、良好に経過している。
もう1例は 転居のため経過を追えていない。 結果)再植を行った1例につい
て14年、移植を行った7例について短期で1年5か月、長期で18年6か月以上経
過を追跡した。症例により様々な治癒経過をたどったが、多様に対応することが
でき、臨床的、エックス線学的に判断して、失敗は認められなかった。


特別講演T 

「小児の口腔外科小手術を安全に行うためのポイント」

尾崎 正雄
福岡歯科大学成育小児歯科学分野 教授

近年、小児の齲蝕が減少し、小児歯科に来院する患児の状況が変化してきている
。本学小児歯科外来に新患で来院する患児の約半数は外科的処置を必要としてお
り、その内容は、埋伏過剰歯の摘出を筆頭として埋伏歯開窓、歯牙腫摘出、低位
乳歯抜歯、舌小帯・上唇小帯形成術など多種多様な処置に対する対応が必要にな
ってきている。年齢も約4歳から10歳までの小児が多く、手術に対する工夫が必
要である。本学のデータでは、乳歯列期における埋伏過剰歯の約90%に位置異常
が起こっており、できる限り早い摘出が推奨される。しかしながら、この時期の
小児は永久歯胚の発育途上であり形成状態や隣接歯との位置関係の把握のため
CBCTにより的確な位置確認が必要であり、摘出に際して隣接に障害を与えない
ような手術方法と対応法の選択が必要である。すなわち術中にパニックを起こさ
せないように、行動変容や笑気鎮静法などを用いた対応が必要である。浸潤麻酔
も痛みのない方法を用いて極力恐怖反応を起こさないよう注意しており、一気に
浸潤麻酔を行うのでなく、数回に分けてゆっくりと行っている。平成30年度より
口腔機能発達不全症に対する管理ができるようになり、ほとんどの舌小帯強直症
の症例で口腔機能発達不全症に対する形成術前後の筋機能訓練も保険で行えるよ
うになってきた。以上のように小児口腔外科領域にも変化が起こっており、術者
自身も色々なスキルを身に着ける必要が出てきた。そこで本講演では、本学小児
歯科で行っている症例を紹介しながら、小児特有の手術テクニックも紹介してい
きたい。


特別講演U

「宮崎大学医学部附属病院口唇口蓋裂センターにおける顎顔面先天異常の集学的治療」

山下 善弘
宮崎大学医学部感覚運動医学講座顎顔面口腔外科学分野 教授

口唇・口蓋裂や症候群など、顎口腔領域に形態・機能の障害を呈する先天異常疾
患が多数報告されている。また、近年では医療全般の発達によって重度の全身疾
患を伴う患者が長期生存を望めるようになったことや、小児慢性疾患や歯科矯正
治療の保険適用範囲の拡大、大学病院の医科・歯科統合や周術期口腔ケアなどで
医科患者が歯科を受診する機会が増えたことなどから、先天異常を伴う患者に口
腔外科的治療を行う機会が増えている。こうした先天異常患者の治療では、歯科
口腔外科、矯正歯科に加え、産婦人科、NICU、小児科、耳鼻咽喉科、小児外科、
放射線科、麻酔科、ICU、内科、外科、精神科、皮膚科など各医科の専門診療科
や、リハビリテーション部の言語聴覚士・理学療法士、遺伝カウンセリング部、
栄養管理部、薬剤師、歯科衛生士、看護師など多領域・多職種連携による集学的
治療が重要となる。宮崎大学医学部付属病院では、口唇口蓋裂・口腔育成センタ
ーを設置し、医科診療科とリアルタイムで連携しながら患者の治療・管理を行っ
ている。耳鼻咽喉科・形成外科・放射線科・歯科口腔外科の合同頭頸部カンファ
レンスや合同手術も行っており、多領域が一体となった集学的治療を実現してい
る。本講演では、当院で治療・手術を行った顎口腔領域先天異常疾患の症例と当院
での集学的治療の取り組みについて紹介する。


シンポジウム

テーマ「 成長発育期における口腔外科処置の問題点を探る 」


1) 「健全な永久歯列を導くために ー小児期の外科的小手術時期についてー」
  西田 郁子   九州歯科大学口腔機能発達学分野 講師

小児歯科には、「子どもは小さな大人ではない」という言葉があります。口腔は
、咀嚼、発音を司る重要な器官であり、成長発育期である小児期の口腔形態は劇
的に変化していきます。私たち小児歯科医は、健全な成長発育に支障を及ぼす因
子をできるだけ早期に発見し、治療することで健全な永久歯列へと誘導し、正常
な口腔機能を獲得させることを目的としています。健全な成長発育に影響を与え
る因子には、齲蝕、歯周疾患、歯牙外傷、口腔習癖のほかに、外科的小手術が必
要となる軟組織疾患や過剰歯および埋伏歯などの歯牙の異常が挙げられます。こ
のような異常所見は見過ごされてしまうと正常な発育過程からよりかけはなれた
状態を呈するため、その発見時期により治療方法やその後の歯列形成に大きな影
響を与えます。そのため、このような因子を早期に発見し、治療することで正常
な成長発育へと誘導することが大切だと考えます。今回は、舌小帯付着異常など
の軟組織疾患や過剰歯・埋伏歯などの歯科疾患に対する外科的小手術の時期につ
いて検討を行いたいと思います。


2) 「小児の口腔外傷 〜軟組織損傷の処置について〜」
  馬場 篤子   福岡歯科大学成育小児歯科学分野 講師

口腔領域の外傷を主訴に来院した患児や保護者への対応は、緊急性、重症度など
から判断し、迅速に対応しなくてはならない。また、保育園・幼稚園・小学校な
どで受傷した場合、教師や養護教諭などが付き添い来院する。このような場合、
患児の既往歴の把握が難しいため必ず保護者に連絡を取り、正確な情報を得るこ
とが必須である。もし基礎疾患を有する患児の処置では、主治医との連携が必要
となる。また、異物刺入による口腔内刺傷は、就学前の好奇心旺盛な小児に特有
の外傷の1つである。その受傷原因のほとんどは転倒によるもので、刺入異物は
歯ブラシなどの身近に存在するものが多い。重篤な損傷を引き起こす可能性も高
いことから異物を口にくわえたままで歩かせないなど保護者への注意喚起が必要
である。更に口腔顎顔面部の外傷は、審美的・機能的に治療が難しいため、術者
が不安に感じた場合は、迷わず形成外科・皮膚科など、しかるべき医科に紹介す
ることも必要である。口唇や粘膜の損傷はまず止血を図る。特に口腔軟組織は出
血しやすいため、来院までの間、大きめのガーゼなどをくわえさせ血液や歯など
を飲ませない工夫を指導する。創部に砂や泥などが擦りこまれている場合は、清
潔な歯ブラシと水道水でこれを除去し、外傷性刺青を防ぐ必要がある。感染対策
として、含嗽剤や抗菌薬、鎮痛剤の投与も必要であり、治療後は創部の状態把握
や適切な治療を行う為に定期的に経過観察を行う。


3)「埋伏や異所萌出での開窓牽引を検討する」
  伊東 泰蔵   (医)伊東会 いとう歯科医院 院長

小児の発育期における永久歯の埋伏や異所萌出による歯列不正は稀ではない。学
校歯科検診によってチェックされる場合、あるいは診療中や保護者の相談で受診
されることもある。しかし意外と放置されている事もある。今回は、歯牙腫の影
響で第一大臼歯の埋伏例や上顎犬歯が同側中切歯根尖部付近に異所萌出を起こし
歯列内に誘導した例、そして犬歯の埋伏例などについて開窓牽引を行った方法に
ついて報告する。そこで、異なった状況での開窓術を行う時期や方法について検
討を交えて考察するが、混合歯列期に乳臼歯を固定源とする場合もあるので健全
な乳歯歯根の確保も重要となる。また牽引する時期が遅くなると萌出する場所の
確保が困難となるために経過観察を行うことが重要であり、そのためにも歯科検
診の意義は大きいものと確信している。


4)「口唇口蓋裂治療と術後の瘢痕」
  笹栗 正明   九州歯科大学顎顔面外科学分野 准教授

術後の創傷治癒においては必ず瘢痕を生じます。一次治癒においては、創接着面
に瘢痕組織が介在してそれが傷跡となり、線状の瘢痕から目立つ肥厚性瘢痕まで
様々な状態を呈します。二次治癒においては、組織欠損部に形成された肉芽を基
盤に創収縮と上皮化が進行し表面には上皮が形成されますが、その深部は瘢痕組
織に置き換わります。創収縮や弾性に乏しい瘢痕組織により瘢痕拘縮が生じます
。口唇口蓋裂の治療においては、そのほとんどで外科的な治療が必要となり、術
後瘢痕は避けて通ることのできない問題です。口唇口蓋裂手術術後治癒は一次治
癒と二次治癒が混在しており、術後瘢痕で問題となることは肥厚性瘢痕と瘢痕拘
縮です。口唇形成術後に生じる肥厚性瘢痕による口唇の目立つ傷跡や瘢痕拘縮に
より生じる口唇や外鼻形態の変形は、患者やその家族の精神的な負担となります
。また、口唇形成術および口蓋形成術後に生じる瘢痕拘縮により上顎歯列弓の狭
窄、顎発育障害や中顔面の低形成の原因となり、外科的矯正治療も含め矯正治療
を困難にしています。口唇口蓋裂治療においては、初回手術に関連する瘢痕をい
かに最小限にとどめるかが重要です。シンポジウムでは口唇口蓋裂治療後の瘢痕
に起因する問題点や、瘢痕抑制のための取り組みについて述べたいと思います。




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第30回 西日本臨床小児
口腔外科学会総会・学術
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30th Annual Meeting of West-Japan Society of Clinical Pediatric Oral and Maxillofacial Surgery